「おもてなし」とは、相手を思って、対価を求めず行う心遣いのことを指します。私が働いていたJALでは、サービスに関するマニュアルはなく、訓練や先輩方の背を見て学んできました。
では CA達は、どういった事に気をつけ、一流のサービスを提供しているのでしょうか。
本記事では、元JAL CAが、客室乗務員のおもてなしについて、実体験を元にお話しします。
・客室乗務員の「おもてなし精神」から学ぶ一流のサービス
・客室乗務員が苦悶する瞬間。おもてなしの力でなんとか解決!
3分ほどおつきあいください。
客室乗務員のおもてなし。大切にしていること。
シンプルに「相手の気持ちに心からなれるか」ですね。
・お客様を、自分の大切な家族と考えて行動する。
例えば自分の祖母が寒そうに腕をさすっていたら、羽織るものや、温かい飲み物を渡しますよね。母がリビングでキョロキョロと何かを探していたら、「何探しているの?」と自然にききますよね。
「接客」と堅苦しく考えずに、ただ相手の事を大切に想い、相手の立場に立って何をして欲しいのか想像して行動する、それだけで素敵なサービスになると教わりました。
そういった素晴らしいおもてなしをされていたのが、一度フライトをご一緒した、とあるチーフキャビンアテンダントです。
短いフライトで、かつ大きい飛行機であっても必ず機内を一周し、チーフとしての仕事も忙しいにも関わらず、お客様の要望を先回りしては、優しいお声がけとともに、毛布やお飲み物のおかわりを配り回っていました。
結果的に機内の雰囲気も良くなり、1人のCAの力でこれほどまで変わるんだ、と驚いた記憶があります。
・情報共有をこまめに行い、チームで動く
機内では、CAが各々、会話の中であったり、目にしたお客様の行動で察したことを、皆でこまめに共有しています。
たとえば、一人のCAがあるビジネスマンのお客様と話が弾み、前日から仕事が忙しくほとんど寝れていないという情報を耳にするとします。その方がコーヒーを別のCAに注文した場合、事前に得た情報を伝え、「一息おつきになってください。」などと、注文を受けたCAに声をかけてもらいます。
よく行くカフェで、自分のことを覚えてくれている店員さんがおり、「お飲み物、いつものにしましょうか?それとも期間限定のもの試されますか?」などと声をかけられたら嬉しい方も多いのではないでしょうか。
フライトの中でもこういった、「お客様なこと覚えてますよ」「大切にしていますよ」(言葉にすると変ですね…笑)という気持ちを表現するため、情報共有を大切な仕事の1つとしていました。
・サプライズをしかける
飛行機には、遠方での結婚式や結婚〜年のお祝いなど、大切な日に搭乗される方が多くいます。またご家族のお見舞いにお乗りになっている方など、お客様の背景は様々です。
会話の中でそういった事情がわかれば、機内で最大限できることをして差し上げます。私が実際に経験したのは、絵葉書にメッセージを書き、飛行機のプラモデルと一緒にお渡ししたり、お見舞いのためにお乗りになったお客様には、折り鶴をCA皆で折ってお渡ししたこともあります。
CAにとっては1ヶ月に何十便も飛ぶ中の1つのフライトでしかありませんが、お客様にとっては一生に一度の大切な思い出のフライトであるかもしれません。ですのでできることは最大限、皆で協力して形にしていました。
客室乗務員が苦悶する瞬間。おもてなしの力でなんとか解決!
CAになったら誰しもが通る「修羅場」というやつです^^ 答え・正解がない問いには「おもてなしの力」ですね♪
最初から一切のサービスを拒否されるお客様
→めげずに想い続ける!
搭乗前に起きたトラブルによって機嫌を損ね、「お食事からお声がけに至るまで全てのサービスを拒否」と事前に情報のあるお客様がいらっしゃいました。
そのお客様は終始しかめ面をされていましたが、いつしか柔らかい表情でグラスに入ったお水とおつまみを召し上がっていました。
担当のCAに聞いたところ、ある時お客様が薬をテーブルに出されたのを見かけ、お水をサッと差し出したところ、「どうもありがとう」と笑顔でおっしゃってくださったそうです。
私の想像でしかありませんが、担当のCAはきっとそのお客様の空間を邪魔しないよう距離を保ちつつも、良いタイミングで希望のものを提供できたことで、そのお客様をリラックスさせることができたのだと思います。
正解はありませんが、「一切のサービスを拒否」と情報があるからと距離を置くだけでなく、幾分か良い方向へ向かうよう努めることが大切なのだと感じた経験でした。
手荷物収納に協力いただけないお客様
→お客様をよく観察しお声がけを工夫する!
飛行機ではシートベルト着用、禁煙など、お客様の安全をお守りする為のルールがたくさんありますが、その中でも案内に苦戦するのが手荷物収納です。
実際に自分がCAになってわかったことですが、このルールを伝えるとムッとした顔をされるお客様や、拒否されるお客様のあまりに多いこと(^_^;) その度にハラハラしつつ、説明し、なんとか納得していただく、という事を新人の頃は繰り返していました。ただそれも、新人の頃だけです!
経験を積むにつれ、搭乗され、席につくまでの動作で、どのくらい乗り慣れているかどうか大体わかるようになります。
よく乗られている方はご自身のペースがあるので矢継ぎ早に案内はせず、逆に乗り慣れてない方に対しては、丁寧なご搭乗御礼と簡単な会話ともに、なぜ収納しなければいけないのか。
お客様の立場に立って説明することですんなりと納得していただけるようになるのです。
後列に座っているお客様で機内食のチョイスを伺えず、ご立腹されるお客様
→搭乗時から気を配っておく!
機内食が二種類ある場合、人気が偏ってしまうと後列のお客様の希望に添えない場合がよくあり、なかには「楽しみにしてた」とご立腹される方もいます。
CAとしてはかなり慎重に対応しますが、まず初めのステップとして、搭乗時から特に後列のお客様と深く会話をする、という技があります。
事前に気を配られ、よくしてくれたCAに怒った姿を見せるお客様はおらず、私自身、そういった事前の心遣いをするCAの姿を見ては、上手いなあと思っていました(笑)
こういった、クレームや不満の芽を事前に摘んでおくことも、CAの力量が見られるところであり、以降のフライトを良い気持ちでお過ごしいただけるためのおもてなしの一環として意識するCAが多くいました。
まとめ|CAの一流のサービス・おもてなし
本記事では、元JAL CAの考える「おもてなし」について、実体験を元にお話ししました。
サービスには正解は無い!
もうその一言であると思います。
それでも、常にお客様の立場に立ってみて、考えた事を行動に移す勇気は必要ですし、よく観察して汲み取る力を持って、出来る限り正解に近づく努力は必須です。
客室乗務員という職業は大変な事もありますが、その分、素晴らしい接客をされる先輩CAは多くおり、人として学ぶことが多くありました。
華やかで学びの多い世界、人生に一度経験するのもよいですね!